日本経済新聞
2021年2月24日(水)16時12分

減給7人戒告2人、総務省接待で処分 総務相は給与返納

公務員倫理規程違反、2人は訓告など

2021-02-24 日本経済新聞 (1)

総務省は24日、菅義偉首相の長男らによる同省幹部への接待問題で11人を処分した。民間の企業や人との付き合い方を定める国家公務員倫理規程に違反したため。重い処分である懲戒は9人で谷脇康彦総務審議官ら7人を減給、2人を戒告にした。

11人のうち懲戒ではない処分は2人で訓告と訓告相当にした。武田良太総務相は3カ月分の閣僚給与の自主返納、黒田武一郎総務次官は厳重注意の処分にした。

加藤勝信官房長官は24日の記者会見で、同じく首相の長男らの接待を受けた山田真貴子内閣広報官が給与の10分の6を自主返納すると発表した。「国民の疑念を招く結果となったのは甚だ遺憾だ」と述べ、山田氏を厳重に注意したと説明した。

山田氏は総務省を辞職した特別職で、同省の処分対象外だった。 自民、立憲民主両党は25日の衆院予算委員会に山田氏を出席させ、説明を求める。

倫理規定は各省庁が許認可を与える相手を「利害関係者」と定める。利害関係者から公務員が金銭・品物を受け取ったり、接待を受けたりすることを禁じている。

2021-02-24 日本経済新聞 (2)

処分を受けた官僚は首相の長男が勤める放送事業会社「東北新社」から接待を受けていた。延べ39件で、そのうち21件に首相の長男が出席していた。東北新社はBSやCSを運営し、総務省から放送業務の認定を受ける。

懲戒処分の9人は今後の昇任や昇給が遅れる。3カ月の減給は谷脇氏と吉田真人総務審議官、20日付で事実上更迭された秋本芳徳前情報流通行政局長の3人。谷脇、吉田両氏は月給の10分の2、秋本氏は10分の1を減額する。

1カ月、10分の1の減給は4人。湯本博信前官房審議官と吉田恭子衛星・地域放送課長、井幡晃三放送政策課長、接待時に官房総括審議官だった奈良俊哉内閣審議官だ。玉田康人官房総務課長と豊嶋基暢情報通信政策課長は戒告にした。

三島由佳情報通信作品振興課長は訓告、出向中の課長補佐級職員1人は訓告相当にした。懲戒ではなく、昇任などに響かない注意処分になる。

総務省の調査で東北新社が負担した費用は総額60万円近くにのぼり、13人が接待を受けた。このうち課長級職員1人は利害関係者ではないと判断し、処分から外した。

国家公務員の懲戒処分には免職、停職、減給、戒告の4段階ある。戒告を受けると処分後1年間は昇任できない。課長級以上の場合、その期間は減給だと1年半、停職だと2年間に延びる。

武田氏は24日の閣議後の記者会見で「国民の疑念を招くに至った。深くおわびする」と改めて陳謝していた。「法令違反への認識の甘さ、知識不足が大きな要因だ」と指摘し、再発防止策を講じる考えを示した。武田氏は接待問題について放送行政に影響がなかったか検証するとも表明している。

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日本経済新聞
2021年2月25日(木)10時28分

山田広報官が陳謝「深く反省」 接待問題、辞任は否定

菅義偉首相の長男らによる総務省幹部への接待問題で、総務審議官時代に接待を受けた山田真貴子内閣広報官が25日午前、衆院予算委員会に出席した。「公務員の信用を損なったことを深く反省する。申し訳なかった」と陳謝した。

総務省の調査によると山田氏は2019年に首相の長男を含む放送事業会社「東北新社」の幹部と会食し、1人7万円超の費用を同社が負担した。山田氏は予算委で「心の緩みがあった。(東北新社が)利害関係者にあたるかどうかのチェックが十分でなかった」と釈明した。

加藤勝信官房長官は同日の記者会見で、山田氏が月給の10分の6にあたる70万5千円を自主返納すると明らかにした。

山田氏は予算委で東北新社との会食は「この1回、確認されているのみだ」と述べた。レストランでステーキや海鮮料理が提供されたと説明した。

会食は「放送業界全般の実情に関する話はあったかもしれないが、一般的な懇談だ」と発言した。東北新社側からの「働きかけはなかった」と言明した。

調査で判明した以外の事業者との会食は「必要に応じルールにのっとって行うことはあった」と語った。「職務を続けていくなかで、できる限り自らを改善していきたい」と辞任を否定した。

武田良太総務相は総務省の調査について、首相の長男との会食を自ら申告した職員はいなかったと言及した。自身が引責辞任をしない考えも示した。立憲民主党の黒岩宇洋、後藤祐一、今井雅人各氏の質問に答えた。

立民の安住淳国会対策委員長は同日、自民党の森山裕国対委員長と会談し、山田氏の辞任を求めた。

総務省は24日、接待を受けていた幹部ら11人を処分した。既に総務省を退職している山田氏は処分対象外のため、月給の自主返納を申し出た。首相は厳重注意し、続投させる考えだ。

山田氏は旧郵政省出身で、第2次安倍政権下の13年に女性初の首相秘書官に就任した。総務省では放送事業を所管する情報流通行政局長や総務審議官を務めた。20年9月の菅内閣発足時に内閣広報官に起用された。

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東京新聞
2021年3月1日(月)09時24分

山田真貴子広報官が辞職、菅首相長男らから7万円超の高額接待 枝野氏「遅きに失した」

 山田真貴子内閣広報官(60)は1日、辞職願を提出し、同日付で受理された。体調不良を訴え、2月28日に入院した。出席を予定していた1日の衆院予算委員会は欠席した。総務審議官当時に菅義偉首相の長男正剛氏らから7万円超の高額接待を受け、問題化していた。接待問題は、首相記者会見などを仕切る官邸所属官僚が辞職に追い込まれる事態に発展。野党は、問題発覚後も山田氏を続投させた首相の判断などを巡り追及を強める構えだ。

 加藤勝信官房長官は予算委で、2月28日夜に山田氏から体調不良で職務遂行が難しいと報告があったと明らかにした。首相は「やむを得ないと判断した」と述べた。加藤氏は自民党に対し、山田氏が当分の間、入院と加療が必要だと診断書を示して説明した。

 立憲民主党の枝野幸男代表は予算委で「首相が先週段階で『辞めてくれ』とお願いするべきだった。辞職は遅きに失した」と批判した。

 山田氏は総務審議官だった2019年11月、正剛氏側の負担で約7万4千円分の和牛ステーキと海鮮料理の接待を受けた。今年2月3日、週刊文春報道で接待問題が表面化。山田氏は25日の予算委に出席し、陳謝していた。


2021-3-1 東京新聞