京都新聞
2018年12月23日(日)08時50分

市職員が右翼関係者ら伴い異動迫る 大津、不当要求を公表せず

 大津市職員が右翼関係者とされる部外者を伴い、市に人事異動の希望を通すよう迫った不当要求事案が2013年にあったことが、22日までに分かった。市の内部文書によると、「暴力、乱暴な言動を伴う行為」と認定していたにもかかわらず、市は事案を公表せず、職員を現在まで処分していない。市は詳細を記録した公文書を「廃棄した」としている。

 学識者は「市は厳正に処分すべきで、ありえない対応だ。不都合なことを隠蔽する体質の表れではないか」と批判している。

 京都新聞は、市が廃棄したとする詳細報告書と、不当要求の場面を再現した一問一答記録の2種類の文書を独自に入手した。A4判で計17枚あり、当時の担当部長や政策監ら職員5人の決裁印が押されている。

 これらの文書によると、不当要求があったのは、13年3月22日午後0時50分から同4時。直前の人事異動の内示などに不満を抱く市職員2人が部外者3人を連れて市役所を訪れ、職員課(当時)、秘書課の担当職員とそれぞれ面談した。

 会議室で「異動希望がなぜ通らない」「市長へ直接話をしに行く」などと主張し、「オイ、コラ!」と叫んで机をたたいた。その後、廊下でも騒ぎを起こしたとされる。部外者の1人は「右翼団体構成員」と記録されている。

 市幹部は2種類の文書について「間違いなく本物だ」としており、市人事課は「時期は不明だが、廃棄したようだ」と文書が存在したことを認めている。

 京都新聞の情報公開請求に対して、市が開示した13年4月の要望等記録兼報告書(A4判1枚)によると、職員らの行為を「不当要求」に分類していた。「暴力、乱暴な言動、社会的相当性を逸脱する手段を伴う行為」「職員の職務執行を妨げることが明白な行為」に位置付けていた。

 職員を処分せず、事案を公表していない理由について、市人事課は「人事管理に関わる問題で、答える義務はない」としている。

 同志社大の真山達志教授(行政学)は地方公務員法の信用失墜行為に当たると指摘し、「公務員としてあるまじき行為。不祥事を放置する対応は組織の劣化につながる。詳細な公文書がなければ事後の検証が不可能になり、廃棄は不適切。誰がどんな意図で捨てたのか、市は解明する必要がある」と話している。



2018-12-23 京都新聞